岩正毛織

岩田 守雄さん

夏の空にションヘルの「ガシャンガシャン」という音が鳴り響いている。

 

こんな普通の田舎の住宅街で、その大きな鉄の固まりを始めて見たとき

心底驚いたことを思い出していた。

 

 

ハツラツとしたしわくちゃの笑顔が向えてくれる。

「よーきたな!」といつも聞く優しい声が飛んだ。

 

 

一宮を中心とした織物産地「尾州」はイタリア、フランスと並ぶ

世界3大織物産地として業界では非常に有名な産地である。

 

なぜ世界から注目される産地なのかというと

「ションヘル織機」というものがあるからなのだ。

特殊な織機なのではなく、

簡単に言えば機にモーターが

ついたようなもの。

 

 

 

織るスピードが遅いため

いろいろな糸が使えて

いろいろな織り方もできる。

だからこそ新しいものが

今もなお生まれ続けている。

 

 

 

 

 

このションヘル織機は世界から見ても

ほとんど尾州でしか稼働していない。

だからこそ、ハイブランドがこぞって

このションヘル織機で生地を発注しているのだ。

 

古い織機が世界最新の生地を織っている。

それがションヘル織機のかっこよさだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日は7月の始めで、

梅雨も明けるか明けないかの

時期だったが午前中でも

のこぎり屋根の中は

ムシムシと暑かった。

 

 

 

 

 

今回の生地「雨つぶ」を

織っていただいたのは

岩正毛織さんご夫妻。

旦那さんの岩田守雄さんは80歳。

 

 

 

作業を見ていると、手の動きや糸の具合などが長年やってきたことを滲ませる。

何歳からやってるんですか?と聞いたら

「中学生から!」という驚きの答えだった。

約70年間ぐらい糸を触り、織機を操り、布を産んできているのである。

 

仕事に向き合い続け、時代の嵐に耐え、作り続ける。それも70年もである。

私は目眩がするようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもお邪魔すると、新作の布を嬉しそうに説明してくれる。

その暖かく誇らしげな表情は、守雄さんの布への想いそのものだと思う。

 

「仕事がもらえるうちは、やりつづけたい。」

守雄さんは、ションヘルを触りながら、そう語り瞳は中学生のように

輝いていた。(interview :designer hiyori)